京大生、人に会う

現役京大生がいろいろな人に会って、そのインタビュー記事を載せるブログです。

No.1:韓国人留学生③~【日本に来てがっかりしたこと】【留学前後で人生観は変わったか】~

 

【日本に来てがっかりしたこと】

――いいことばかりじゃなくて、想像と違った、なんてこともあったと思うんだけど?

 

S:いっぱいありますよ。そうだな、思っていたより街が汚いとか。

 

――どんなピカピカを想像してたんだよ。

 

S:それに、言うほど日本人は礼儀正しくなかった。失礼ってことじゃないけど。期待しすぎだったかな。あと、京大生が遊びすぎ。もうちょっと真面目に勉強しろよって思います。

 

――申し開きの仕様がございません。

 

S:京大つながりで言うと、京都大学にも幻滅しましたね。タテカン廃止したり、吉田寮を潰したり。あんまり自由じゃないな、って。

 

――ここ10年でだいぶ雰囲気が変わったよね。

 

S:あと、心の底から残念に思ったことも一つだけ。

 

――なになに?

 

S:セクハラです。韓国だったら絶対に許されないようなことがまかり通ってる。身の回りで嫌な思いをした子もいて、本当に腹が立ちました。

 

――韓国はセクハラに厳しいんだね。厳しいも何も、犯罪なわけだけど。それでも、儒教文化の影響とかを考えると、ちょっと意外かも。

 

S:ここ最近で急激に厳しくなってます。いまどきの若い女性は、超強いですよ。セクハラなんてやった日には血祭です。おじさん世代の意識はまだまだ遅れてますけどね。

 

――韓国って、思い切りがいいっていうか、一度決めたらその方面にゴリゴリ突き進むよね。IT化もそうだし、さっきの禁煙化にしたって。

 

【留学前後で人生観は変わったか】

――留学してから、何か自分の中で変化はあった? あるいは、見えてきたものとか。

 

S:これは韓国の大学に進学しても思ったかもしれませんが、自分は坊ちゃん育ちだったのかな、と。いろんな人に会って、その人達の境遇を知る中で、自分は結構恵まれていた気がして。習い事なんかもいろいろやらせてもらえたわけですし。それに、なによりも、今こうして外国にいる。

 

――生い立ちに関しては、僕も少なからずそういう気持ちになるな。

 

S:それに、自分が丸くなった気がします。もともと僕は保守主義的なところがあったんですけれど、それが変わりました。なんでもいいじゃん、って。

 

――それはずいぶん大きな変化だね。

 

S:日本人っぽくなったのかも。あと、自分の国籍にも、あまり思い入れがなくなりましたし。イメージとしては、外資系の銀行マンが近いかな。引き抜かれて職場を転々とする感じで。やめるのはそこが嫌いだからじゃないし、だからめぐり合わせ次第ではまた戻ってきてもいいと思っている、みたいな。所詮、国籍っていうのは、ある国家からサービスを受ける権利でしかありませんしね。でも、母親には「子供に韓国語を教えてほしい」と言われたので、ちょっと複雑なんですが

 

――すると疑問なのは、どうして徴兵から逃げないのかという事。国籍にこだわりがなくて、外国で生きていく語学力があるなら、それも頭をよぎるんじゃないかと思うのだけど。

 

S:理由はいくつかあるんですけどね。まずは、一貫性の問題かな。僕はずっと徴兵制を支持してきたので、自分の番が来たからには行かなきゃいけないと思っています。それに、徴兵逃れは、下手すると韓国に入国できなくなるんですよね。そうなると、親や兄弟、友達とは会えなくなっちゃう。さっき、国への思い入れはないと言いましたけど、人とのつながりはいつまでも大事にしたいと思っています。やっぱり、僕はあの場所で18年間生きてきたので。

 

――徴兵については韓国人に固有の問題だと思うんだけど、それに向き合うにあたっての気持ちにはシンパシーを感じるな。

 

S:人とのつながりってところでは、日本で出来た友人たちもとても大切です。当たり前ではあるんですけれど、留学しなければ会えなかったわけですし。日本人だけじゃなくて、いろんな国の人たちと仲良くなれました。留学して一番大きかったのは、やはりそこですね

 

――なるほど。いやぁ、今日は本当にありがとうね。とっても楽しかった。

 

ここで唐突に現れるマスター。

 

マスター:帰国するんだって? 元気でな!

 

S:ムキムキになって帰ってきます!

 

固い握手を交わす二人。

インタビューで使ったカフェは、S君の行きつけだったということです。

 

おわり